BISTRO〜5つの奇跡〜


ある日の昼下がり

それぞれ自分のレストランを持つオーナー5人が会議を開いていた



「よし。それではこの方向で話を進めましょうか」


「我々5軒の高級レストランが手を組めば怖いものなしでしょう」


「そうですな。今から笑みがこぼれますわ」


「これでチェーン展開していけば日本一のレストランになれますね」


しかし

そんな4人の笑顔にそぐわない顔の人物が1人・・・


イタリアンのレストランのオーナーだ



「どうかされましたか?」


「いや・・・少々うちの店で心配なことがありましてね」


「何なんですか?心配なことって」


他の4人は不思議そうに聞く



「シェフの1人によく騒ぎを起こす問題児がいるんですよ。
 つい先日も料理に文句をつけられて、お客様と乱闘してしまいまして。
 すぐにクビにでもしたいのですが、料理の腕は悪くないんでね・・・」


「あぁ、私の店にもいますよ。
 そういう奴が」


「私もですよ」


「私もなんです」


「私のとこもですよ」


何という偶然であろうか


クビにしたいが、できない人間が1つの店に1人いたのだ



「どうしましょうか」


「確かにそういう連中にいてもらっては困りますなぁ」


「・・・こういうのはどうでしょう」


「何ですか?」


「私が経営していた店で1つ今使ってない店があるんです。
 そこを5人に使わせて、勝手に店を経営させるというのは?」


「なるほど。
 私たちはその店の経営に一切口を出さないことを条件に
 もう私たちの店には戻って来ないこと・・・
 という感じですか」


「表面上では良いことに見せかけて事実上のクビということですか」


「そういうことになりますね。
 そんな5人が集まってもどうせまともに店は回らないでしょうし。
 潰れるのがオチでしょう」


「いいんじゃないですか?
 我々の害にならなければ良いことですしね」


「では日曜日に私の店に連れてきてください」


「わかりました」



そうして集められた5人


この5人こそが


レストラン・ビストロのシェフたちなのだ



―日曜日―


「おい!何なんだよ!離せよっ。まだ料理の仕込み終わってねぇんだぞ!」


「いいから来い!」


騒がしい声が聞こえたと思ったらカランカランと店のドアが開いた


2人が入った店の中にいたのは


この前話し合っていた他の店のオーナー4人


そして


その4人に連れられてきたであろう20代〜30代の4人の男



「早く入れ」


「うっせーな。んなんだよ」



一際騒がしくする男を連れてきたオーナーが話し始めた



「え〜、いきなり連れて来られて君達は何がなんだかわからないと思うが。
 単刀直入に言うと君達5人でこの店を経営してもらう」


「は!?」


「ちょっと、何言ってんの?おっさん」


「おっさん?・・・まぁいい。  君達は我々の店の中でもずば抜けて良い人材だ。
 その5人に集まってレストランを経営してもらう、ということだ。
 経営方針などは自由。
 各自で話し合いなどをして決めてくれ。
 私たちは一切口出しはしない。その代わり・・・
 私たちの店には今後顔を出さないこと。
 今日から君達の職場はここだからね」


単純な5人の若者は

見事オーナーの口車に乗せられた


「・・・俺がずば抜けて良い人材・・・?」


「マジ?やっぱり俺って天才だったんだ」


「・・・いいよ!その提案乗ってやるよ!おっさん!」



2度目の「おっさん」という発言にオーナーは顔をしかめたが続けた



「そうかそうか。
 それでは自己紹介ぐらいはしておこう。
 木村。お前からやりなさい」


「はぃはぃ。
 えーと、木村拓哉です。
 得意な料理はイタリアン全般。特にパスタかな」


「俺の名前は香取慎吾!
 得意なのはもっちろん俺も大好きなデザートっす!」


「えー、僕は草なぎ剛です。
 得意な料理は韓国料理です」


「稲垣吾郎です。
 料理は言われたら何でも作るけど、
 基本はお客様にお出しするワインを選ぶ仕事の方が多いかな」


「俺は中居正広。
 料理はあんま作れねぇかな。
 ホール担当ってことでよろしく!」



「よしよし。自己紹介も終わったということで我々は退散するとしよう」


「え、おっさんたちもう行っちゃうの?」



逃げるようにして立ち去ろうとするオーナーたちに向かって

中居は不思議そうに聞いた


「あ、あぁ。君達も色々5人で話し合わなければならんだろう」

「・・・まぁいいけどさ」


「あ、すみません」


草なぎが思い出したように聞く


「店開くのに必要なものは揃えてくれるんですよね?」


「ちょっとちょっとつよぽん!」


「つ・・・つよぽん・・・?」


「剛だからつよぽん!ってかさぁ、そんなの当たり前でしょ〜。
 そのおじさんたちが用意してくんなきゃ、俺ら仕事なんてできたもんじゃないって」


香取が当たり前のように答えた

「で、どうなんですか?」


再び草なぎは問いただす


オーナーはしばらく無言になる


オーナーからしてみれば

こんな奴らに金など掛けたくない

というのが本心だろう


「本気で用意しないなんて言うんじゃねぇんだろうな。
 ・・・まさかな」


「おいおい。
 俺らが用意もナシに本当にこの話受けると思ってんのー?」


木村・中居がにらみつける



「わ、わかった。
 用意だけはするとしよう。
 だから明日からもう店には来るな」


「はいはい。わかったよ」


「では明日宅配便などで届けさせる」


「どうもごくろうさまー♪」



そしてオーナー5人は店を後にした


「あんな約束して良かったんですか?」


「まさか。本当に用意などするわけないでしょう。
 あいつらはもう店には入らないと約束したのですから。
 手出しはできまい」


「そんなことだろうと思いましたよ」


「まぁ、オーナーったら怖いですわ」


「はっはっは」



そして翌日―


「どうなってんだよ!」


まだオープンしていない店から怒鳴り声がひびく



「用意なんてこねーじゃんよ!」


中居がガンッと椅子を蹴り飛ばす


「まぁもう少し待てって。きっと来るから」



「・・来ないと思うよ」


中居をなだめる木村にそう言ったのは稲垣だった



「・・・何でそう思うんだよ?」


木村が聞き返す


「あの人は僕たちのことを優秀な人材みたいに言ったけど、
 僕は逆に店でのお荷物だったと思う。
 そんな奴に店持たせるなんて虫のいい話はないよ。
 僕たちはきっとクビになったんじゃないかな」


「げっマジ??どうしよう!つよぽん!」


「だから、つよぽんってやめてよ」


「・・・んだよそれ・・・」


現実を知り、落ち込む香取、草なぎ、木村


しかし中居は違った


「じゃぁ・・・見返してやろうぜ」


「え?」


「お前らくやしくないのかよ。
 あんなオヤジにこけにされて!
 確かに店に迷惑はかけたかもしれねーけど、仕事はちゃんとやってたつもりなんだよ。
 こんなんで納得するわけねぇだろ」


「確かにそうだよね」


中居にそう言われめずらしく真面目な顔して答えた香取


「だろ?」


「うん。みんなもさ、5人で協力してあいつら見返してやろうよ!」


「そうだね。僕も乗るよ」


「あ、じゃあ僕も!」


「じゃあって何よ。つよぽん!」


「だからつよぽんって何なの!慎吾」


「・・・木村は?」


中居が心配そうに聞く


「あ?わかったようなこと聞くんじゃねぇっつの。
 やるに決まってんだろ」


「よっしゃ!!決まりだ!」


こうして新しい店オープンへの道が開いた




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